八ヶ岳黒百合ヒュッテ山小屋物語
黒百合ヒュッテ

山小屋主人米川正利著「山小屋物語」より



四季折々の八ケ岳の顔が書かれています
山小屋主人としての今昔、野生の小動物との出会い、心あたたまる人との語らい、
寒さ厳しい冬の中の小屋守り、など、八ケ岳の歴史と共に灯火の下ご覧下さい


(抜粋)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
七月中旬にかけて、山は花で満開になる。山一面に花が咲き誇り、歩くだけで花のにおい
がついてまわる。もちろんクロユリの花も黒百合平に群生して開花する。
クロユリの花もよく観察すると何種類かの色があって、総体的に黒い色であるが、花弁の
内側が緑色の強い花、黄色や赤色の強い花とあり、真っ黒というのはほとんどない。むし
ろ紫色の強い黒色が混ざった花、といった感じである。こんなにクロユリの花が群生する
のはここくらいで、他の山ではあまり見かけないのではないだろうか。
天狗岳のいわばにかけて、ミヤマダイコンソウ、イワウメ、イワヒダ、ツガザクラ、ハク
サンシャクナゲと、数え切れない花々が次から次へと咲く。毎年秋までは覚えていた花の
名前もすっかり忘れてしまい、この季節に新しくまたひとつ思い出すといったしまつであ
る。いろんな人たちに花の名前を聞かれるので、絶えず植物図鑑を見なければならない。
またこの季節は、花とともに小鳥も多くなる。ビンズイ、ウソ、アオジ、アカゲラなど、
朝の四時頃から夕方の六時頃まで、にぎやかに鳴きどおしだ。夜になるとあちらこちらで
ヨタカも泣きだす。鳥の声を聞いているだけで時間が経ち、一日が早く過ぎていく感じだ。
花があり、鳥がいて、気温も温かくて、一年中でこの頃が山ではいちばんいい季節だ。花
を見て回り、鳥の声を聞きながら後を追いかけて歩くこの時期の小屋番が一番楽しい。
こんな生活をしていてよいよいものだろうか、とつくずく感じる時でもある。

山小屋物語 米川正利 著  山と渓谷社 定価1,400円

ほろ酔い黒百合―北八ヶ岳・山小屋主人のモノローグも発刊されました
( 山と渓谷社 定価1,890円 )














トップページへ